最近目にすることの多い原油価格のニュース。原油価格は私たちの生活にも大きな影響を与えるといわれるけど、一体今後どうなるの? エコノミストの中原圭介さんに聞いてみた。
「原油価格は底打ちし、数年は低位(1バレル当たり25~45ドル)で安定するでしょう。元々、2014年から原油安の状態が続いていましたが、これは中国経済の失速などが影響し、需要に対して供給過剰だったから。一時期上昇していたのは、原油生産国のサウジアラビアとロシアが原油を増産しない方針だと考えられていたからです。しかし、同じく生産国のイランは増産の構えを示しており、トータルで見れば、原油の供給過剰は続くとみられています」
4月17日にドーハで行われた主要産油国による会合では、供給過剰状態にもかかわらず、原油の増産凍結が見送られた。凍結に反対するイランと、サウジアラビアとの対立(イランとサウジアラビアは現在国交を断絶している)が影響しているのだという。それまで供給過剰状態の改善が期待されて上がりつつあった原油価格は、一転して急落となった。
では、そもそも原油価格が下がると、私たちの身の回りでは具体的にどんな影響があるのだろうか?
「ガソリンや灯油はもちろん、電気代や食料品、原油を原料とする製品(プラスチックや洗剤)など、その影響を受ける分野は多岐にわたります。例えば、石油を燃料とするハウス栽培の暖房費が下がれば、収穫できる野菜や穀物の値段が下がります。家畜のエサとなる飼料穀物の価格が下がれば、食肉価格が下がることも考えられます」
もちろん、原油価格の下落はエネルギー企業にとっては逆風となるが、多くの企業にとってはエネルギーコスト削減によって収益率はアップする。企業の業績が上向けば、そこで働く人々の給料がアップする可能性もあるはずだ…。
「消費者への影響はまだまだないでしょう。その理由は2つ。1つは、原油価格が下がってもすぐには消費者向け商品の価格に連動しないからです。例えば、穀物を作り始めたタイミングで原油安となっても、下落分をすぐに反映することは計画上難しい。だいたい1~2年のタイムラグが発生します。もう1つは、3~4年前に比べて円安が進んでいることで様々な商品の輸入コストが上がっているから。日本の食品の約7割は輸入です。原油安のメリットを円安が打ち消してしまっていて、一般家計の視点で考えると、むしろ円安の影響の方が大きく現れてしまっています」
中原さんによれば、「原油価格が今の水準で推移し、為替相場が1ドル100円くらいになれば、数年後に食料品価格に反映されるなどの消費者への恩恵はあるでしょう」とのこと。
原油安になれば商品の原価は下がるものの、為替相場との関係によって必ずしもすぐには価格に反映されない。まだまだ私たち会社員が、財布の紐を緩めるまでには至らなそうだ。
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