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『普通の仕事』となった風俗への認識

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『日本の風俗嬢』(中村淳彦/新潮社)によれば、風俗業界、とにかくお金が回っていないという。

長引く不況の影響なのか、若い世代の風俗というカルチャーへの馴染みの薄さか、客足は遠のくばかり。

さらに、これまた不況の影響なのか、働きたいと言って風俗の門をたたく女性は後を絶たない。

しかし、ただでさえ客が減っている中で、一昔前のように「女性ならば誰でもいい」といった採用基準ではさらなる客離れを引き起こすだけで、店が成り立つわけもない。

そのため、“風俗嬢への就職”はかなり狭き門になっているのだとか。
 と、のっけから景気の悪い話になってしまったが、とにもかくにも安倍さんはアベノミクスで景気は必ず上向くとアツく語っていたけれど、風俗業界にはいまのところいい効果は現れていないのは間違いないようだ。

 そんな厳しい世界で働く風俗嬢という女性たち。彼女たちはいったいどんな女性なのだろうか。

個人的な話で恐縮だが、筆者は2年ほど前まで風俗求人誌で連載を担当していた。

毎月5人前後の風俗嬢へのインタビューを数年間続けていたのだ。登場するのはこの道ウン十年と思しきベテランソープ嬢から、気軽にバイト感覚で働く女子大生やOLのデリヘル嬢までいろいろ。まともに会話が成り立たないような人も中にはいたけれど、総じて“普通の女の子”という印象を抱いた。

傍から見れば信じられないかもしれないが、「ホストに貢いで借金を抱えてやむにやまれず」「親に無理やり働かされて」みたいな悲惨なケースはほとんどなかった。

 そして、この本『日本の風俗嬢』である。

 本書では前半で風俗業界の置かれた現状や風俗の業種、風俗店側の採用に関する考え方などを解説。

そして、後半では風俗嬢への取材やアンケートを元に風俗嬢の実態に迫っている。

その中でも、やはり本当に切羽詰まって風俗へ…という女性は少ない印象だ。

 経済的な事情から親の援助が得られず大学の学費を稼ぐために風俗で働くなんて悲惨という他ないような気もするけれど、当の本人はあっけらかん。

いわく、風俗は時間に融通が効くし短時間で稼げるので週6アルバイトをするより効率的だとか。

いわく、風俗がなければ大学に通い続けることができなかったのだから感謝しているのだとか。

 また、主婦業の傍ら、もしくは介護などの仕事の傍ら、風俗に従事する女性も登場。

住宅ローンがあるからだとか、ダメになったら辞めればいいからとか、どうにもこうにも軽い印象が否めない。

 もちろん、いずれの場合も雇用や収入の不安定さや彼女たちの親世代を取り巻く経済難などがあり、それらは決して簡単な問題ではない。

けれど、そこで「ならば風俗」となれるほど風俗嬢というのは簡単な仕事でもないのだ。

 風俗嬢の仕事の難しさも、本書では述べている。見た目やスタイルが重要なのももちろんのこと、ただ淡々とルーティンをこなしているだけでも客はついてこない。自分が主体的に“どんなサービスをするのか”を考えていかなければ、満足な収入を上げることができずにお茶を挽くことになる。

かなり厳しい世界である。でも、そんなことを知ってか知らずか、彼女たちは気軽に飛び込んでいくのだ。

 ただ、忘れてはならないこともある。性風俗が普通の仕事になって従事者への偏見が無くなることと、“だから風俗で働いても大丈夫”と若い女性たちに思わせることはまったくの別問題であるということだ。

 風俗が誰でも稼げるラクな仕事ではないということもある。

だが、それ以上にやはりセックスワークは女性に様々な負担をかけることも事実だ。

性感染症などの問題だけではない。仮に自分の家族や恋人が風俗で働いていたら、人はどう思うのか。

母親が風俗で働いて自分を育てたと知ったら子どもは何を感じるのか。

それは、セックスワーカーへの偏見がなければ大丈夫といった簡単な話では絶対にない(もちろん本書もそれに目をつぶっているわけではない)。

 少なくとも、いくら本人があっけらかんとしていても、“学費のために風俗に”という状況を生み出すような社会にしてはいけないと思うのだが、いかがだろうか。

 

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