人は、自分の生まれる環境を選べません。
富豪の家に生まれるか、貧乏な家に生まれるか。
愛情あふれる親に育てられるか、まったく愛情を受けずに育つか。
自分の境遇に、「なぜ(WHY)」と問いかけても、答えは得られません。
それは、「たまたまそうなった」としか言いようがないのです。
科学では、台風や地震、雷などについて、
「なぜ、そのような現象が起こるのか」ということは解明されています。
しかし、この「なぜ」とは、「WHY」ではなく、
「HOW(どのようにして)」ということであるにすぎません。
台風や地震が起こるメカニズムは判っても、
それに何の意味があるのか、ということまでは、科学では説明できません。
私たちにできるのは、せいぜい、経験と知識を使って自然災害を予測し、
できるかぎりの備えをすることだけです。
ガンに侵された人は、「なぜ(WHY)自分がこんな目に」と運命を呪う前に、
医者に外科的手術で腫瘍を摘出してもらわなければなりません。
私たちは、さまざまな現象がどのようにして(HOW)
起こるかというメカニズムを解明し、対処するしかないのです。
罪悪感や劣等感を感じている人は、それをはっきりと認めるのが怖いから、
いつまでも自分の心を抑圧し、自分をごまかして生きています。
X線やCTスキャンでガン細胞の位置を特定しなければ、治療することもできません。
自分の性格を直したいと思ったら、「どうして(HOW)そのような性格が形成されたのか」
というメカニズムを認識するだけで充分です。「なぜ(WHY)自分が……」
という罪悪感や劣等感をもっていては、一歩も前に進めません。
生まれながらにして罪を背負っている人など、この世にひとりもいません。
誰でも、生きるだけの価値があったから、数十億分の一の幸運な確率で生まれてきたのです。
なぜ自信がもてないのか、なぜ不機嫌になるのか、なぜ不安を感じるのか。ひとつひとつの心理を、
客観的に分析して、改善していってください。
風邪を引いたときには、お腹を冷やさないようにし、
部屋の喚起をよくして、充分な睡眠をとればよい。それと同じレベルの話なのです。
風邪を引いたのは、あなたに罪があったからではありません。