だらだら仕事をしているつもりはないのに、なぜか早く帰れない。そもそも業務量が多すぎるケースもあるだろうが、慢性的に残業が発生してしまう原因は他にもあるかもしれない。
リクルートワークス研究所では、多くの会社員が抱える“帰れない悩み”を解決するべく「時短研究プロジェクト」を発足。時短の達人たちに「なぜ早く帰れるのか」をリサーチすることで、残業の原因を究明する診断シートを作成したという。今回はその中身を見てみよう。
【残業の原因診断シート】
(1)中長期の計画を立てるより、目の前の仕事から終わらせるほうだ
(2)仕事の優先順位を上司に確認するより、自分ができることから順番に進めていくほうだ
(3)アウトプットの質を高めるために、時間はかけられるだけかけるほうだ
(4)資料を作るときは、色使いや表現など、細部にまでこだわるほうだ
(5)周りの人より、仕事を終わらせるまでに時間がかかるほうだ
(6)一度終わらせた仕事でも、上司や関係者から指摘を受けて修正を行うことが多いほうだ
(7)「自分にしかできない仕事」が多いと思う
(8)自分に任された仕事は、すべて自分でやりきるほうだ
(9)皆が残業していると、先に帰りづらいと思うほうだ
(10)皆で残業することで、職場の一体感が強まるというのは一理あると思う
該当項目が多いほど残業が常態化している可能性は高い。また、どの項目が当てはまるかによって、残業の原因パターン=「症状」は異なるようだ。
たとえば、(1)(2)が該当する人は「無計画残業症」。与えられた仕事をバリバリこなし職場で貴重な戦力とみられている一方、来た仕事を無計画にただクリアするだけになってしまっている。自転車操業に陥り、残業してどうにか毎日帳尻を合わせているような状態だ。
また、(3)(4)が該当する人は「こだわり残業症」。資料や提案書の色使いや表現といった細部にまで必要以上にこだわるあまり、残業してまで過剰な品質を追求してしまうタイプといえる。
他にも、(5)(6)は誰にも相談せず、手探りで仕事を進めている「ノウハウ不足残業症」、(7)(8)は自分がやるしかないと勝手に思い込んで必要以上に仕事を抱え込んでしまう「かかえこみ残業症」、(9)(10)は自分だけ先に帰るのが後ろめたく、残業しなくてもいいのに何となく会社に長居してしまう「おつきあい残業症」にそれぞれ分類される。
それぞれの症状ごとに“処方箋”は異なるが、多くの場合は考え方を少しスイッチするだけで改善の道が見えてくる。
たとえば、「無計画残業症」の人は上司から与えられた仕事をとにかく打ち返すのではなく、「どんな仕事が来るかを予測し、優先度の高い仕事から確実に打ち返す」スタイルに変更すること。1年や半年単位の仕事の流れを頭に入れ、その中で重要な仕事がどれかを見極めておけば、突発的に発生した仕事に翻弄されることなく重要な業務に注力できる。そうして仕事の主導権を自分で握ることができれば、場当たり的なワークスタイルが改善され、残業も減っていくという。
また、「こだわり残業症」のケースでは、過度なこだわりを捨て「相手にとってちょうどいい」水準で終わらせることを心がける。自分のこだわりより、顧客や上司にとって何が必要かを重視して仕事をすれば、必要な水準を保った上で残業も減らせるはずだ。
加えて、「時短の達人」たちが実践している以下の仕事術を参考にすると、定時退社に近づけるかもしれない。
・オフィスは考えごとをするには不向き。考えごとは会社以外の場所で(コンサルティング)
・待たせること=迷惑をかけていると相手に気づかせるため、5分以上は待たない!(教育)
・アイデアはどんどん周りに渡し、本当にやりたいことだけ手元に残す(メーカー)
・電車で移動中、スマホをいじらない。通勤電車でもアイデア出しはできる(金融)
・メールは音声入力で済ませる。パソコンで書くより早いし、どこでも返事できる(教育)
・残業して寝不足になっていては頭脳労働はできない。早く帰って7時間睡眠を死守する!(金融)
・ちょっとした打ち合わせでは、座らない。座った瞬間、無駄話が始まる(教育)
出口のない残業地獄にハマっている人は、これらを参考にしてみてはいかがだろうか? 最初はかえって面倒に思うかもしれないが、これ以上貴重な時間を浪費しないためにも取り組む価値はあるだろう。